【連載小説】あかねいろ

前半あらすじ

野球に行き詰まっていた僕は、中学2年生の冬に見た大学ラグビーの劇的な試合に触発されて、高校からラグビーを始める。

ラグビーは僕を変えた。陰気で真面目の皮を被った僕を、陽気で裏表のない明るいバカに変えていく。初めの試合でトライをハットトリックする一方で、3年生の多くが引退する試合で、自分勝手なプレーでチームの逆転のチャンスを台無しにしてしまう。 

長野の山奥での練習合宿では、まさに地獄のような1週間が続いた。でも、練習が苦しければ苦しいほど、合宿所が汗臭ければ汗臭いほど、ジャージがドロドロになればなるほど、なぜか気持ちが高揚する。高ぶってくる。なんでもできるような気がしてくる。

 文化祭では初めて彼女を作った。しかし、1ヶ月後の花園予選で思わぬ敗退を喫し、彼女よりも練習をすることを優先する。

 新しいチームはF W中心のスタイルのチームになり、バックスの僕たちはフラストレーションを溜めていく。そんな中僕は、春の試合で日本代表候補の相手に対して、試合中に暴力沙汰を起こしてしまい、監督から謹慎を命じられる。不貞腐れた僕は部活をサボり、ゲームセンターをうろついているところを見つかり、さらに立場を悪くする。

 僕の代わりに急遽公式戦でセンターとしてデビューした高田が、その最初の試合で強豪校の相手から強烈なタックルを見舞われ、頭を強く打ってしまい、意識不明となる。救急で運ばれた彼は、生きてはいるものの意識を取り戻さない。意識を取り戻さないまま、入院をすることになった。

 僕は自責の念に苛まれる。そして、自分の心の中の闇を映し出す。過去に自分が犯してしまったことがありありと浮かんでくる。僕はラグビーをやめなければいけないと思う。それでいながら、僕は、一方で大きな木の姿を見る。いつも僕の心の中にある大きな木の揺らぎを見る。

ラグビーをきっかけに、爽やかな、小さな奇跡が起こります。