ラガー箚記:ラグビーW杯フランス大会 勝手にレビュー 準々決勝

日本が進むことのできなかったベスト8の対決は、ラグビーの面白さ、ラグビーの奥深さ、卒して、今、世界のラグビーの最高峰のレベルがどういうところにあるのか、その全てをしっかり見せつけてくれる、最高の戦いが揃いました。

特に、NZと南アフリカ。劣勢と思われた準々決勝の戦い方は、改めて彼らに流れる「血」のようなものを感じさせる戦い方でした。


第1試合:アルゼンチン 29ー17 ウエールズ


正直、前半から後半の途中にかけては、双方にミスが多く、ミスを上手に得点に結びつけてきたウエールズが、やっぱり試合巧者か、、準々決勝、やっぱりこういう固い試合になるな、、という印象でした。

ウエールズの背番号がハゲハゲになっているとか、主審が交代するとか、そういうことの方が芽を引きました。

が。

後半60分過ぎ。劣勢のアルゼンチンに、フッカーのクレイビー、そしてSOのサンチェス。2007年からで続けている大御所たちが登場して、一気にアルゼンチンの雰囲気が変わりました。

まず、元気の出たFWが逆転のトライを押し込む。今まで割れなかったウエールズのゴールラインを、クレイビーの入った最初のプレーでFWが突破して見せる。

そして、ウエールズが最後の攻勢を仕掛ける75分。少し苦し紛れのパスをインターセプトしたのはサンチェス。50mを独走して突き放す。

さらに、最後は、50mを超えるロングキックを蹴り込み、一気に勝負をつける。

あっという間の逆転劇。ワールドカップのノックアウトステージというのが、いかに特別な場所か、そこにおいて、どんなことをすればいいのか、最後に出てきた二人が、アルゼンチンを完璧に導いてみせた。


決して双方とも誉められた試合内容ではなかっただけに、最後に出てきた千両役者が一際目立った試合でした。


第2試合:NZ  28ー24 アイルランド


最高の試合。アイルランドの方が上だったはず。しかし、NZが最高のディフェンスを見せ、そして、ワンチャンスを確実に得点に結びつけた。ラグビーというのは、攻めて勝つだけではないのだということを示した。1つ1つの要素の全てのレベルが高く、惚れ惚れする試合。

最後の40フェイズ近いアタックとディフェンス。こんな試合、見たことないです。NZが少ないチャンスを生かして、最後は守り切った。NZが守り切った、という展開が意外。素晴らしい試合でした。

アイルランドは、結果論としては、PGを狙わないで行ったのはどうなんだろう。そこだけ、普段とは違うことをした。ただ、アタックはアイルランドの方が上だった。けれど、得点は、NZが上だった。2回のシンビンがあっても、守り切った。NZのディフェンスの力。その底力。

NZは圧倒的な力はなかったけれど、3つのトライは、本当に1チャンス。とにかく今日は、押し込まれながらもディフェンスを仕切った。こういう試合もできるのだ。こういうラグビーもできるのだ。底力、というもの、アイデンティティーというものを、改めて感じる。

固い試合になるかと思いきや、テリトリーキックが少ない、スクラムでの時間ロスの少ない、見ていて楽しい、最高のラグビーが見れました。その最高のラグビーになると、やっぱりNZが一枚上、になるのかな。。北半球の固い、ゴリゴリのラグビーに徹したら。。でも、そればかりをしないから、アイルランドは強くなったわけで。

W杯で、最後の1本を、絶対に取らせないディフェンス。ペナルティをしてゴール前のラインアウトになれば、トライを取られる可能性は高いから、ペナルティも絶対ダメ。そこで80分目前から22m前後で40フェイズ。相手は世界一のアイルランド。それをやり切るのは、なんなんだろう。

とにかく感動しました。




第3試合: イングランド 30ー24 フィジー


イングランドが固い試合運びでフィジーをよりきった試合。後半70分に14点差を追いついたフィジーを、ファレルがDGで突き放したところがハイライト。トライ数ではフィジーが上。しかしイングランドが上手にスコアをマネジメントして、ある意味無難に勝利。

イングランドはキックの精度が素晴らしかったし、ディフェンスも強かった。ただ、アタックはそこまで見どころはなくて、次の試合は、南アフリカに対して、どこまでディフェンスが粘れるか。。。今の南アフリカは、パワーで押してくるだけのチームではなく、多彩なアタックをしてくるので。ロースコアになればイングランドにも目があるが・・・

フィジーは、一瞬で14点とってしまう力があるのだけど、80分のうち、70分は、ほぼイングランドに支配されてしまってい増田。イングランドのペースにお付き合いしてしまっていた、という感じ。この辺り、熱くなりすぎない、奔放になりすぎない、クレバーな試合運びができるようになったことは、彼らの進化であったのだろうけれども、うーん、今日だけ見れば、もっと”らしい試合”を見たかった。。。

フィジーがこの先、どういう進路を辿るのか。今回のように、適切なマネジメントのもと、しっかりとした固い戦術を遂行していくのか、はたまた、これまでのフィジアンマジック、と呼ばれるような、動き出したら止まらない、というようなアタックを押し出していくのか。あるいは、その調和をとりながら高めていくのか、とても興味深いです。



第4試合:南アフリカ 29ー28 フランス


前半はフランスが試合を支配した印象があります。南アフリカとの正面での衝突を避け、うまくずれた状態からの裏へのキックを多用し、そこに適切なプレッシャーをかけていき、テリトリーを、時にマイボールすら確保していく。

特に1本目のフランスのトライは、こんなに鮮やかなトライがあるのか、というほど美しいトライでした。

それに対して、南アフリカのトライはラッキーなトライで同点。対照的なスタートでした。

前半はフランスが優勢に進めながらも、スコア的には、南アフリカが、トライチャンスを確実に活かしきり、拮抗した展開に。フランスの2本目のトライの後のコンバージョンに対して、コルビのスーパーダッシュによるコンバージョンセーブは、この大会の、最優秀プレーになるのかも。結局、もしも、この「2点」があれば、試合がひっくり返っていたわけで。

いずれにしても、前半で両チームが3トライずつを取り合う展開は、予想されたものではなくて、1つ1つのプレーの質の高さ、ボールの動く展開に驚かされました。ラグビーが、こんなにも「見ているだけで興奮する」ものなのだというのを見せつけられました。何しろ、この両チームで、前半33分まで、スクラムがたったの1回しかなかったです。。


後半は一転してスコアが動かなくなります。フランスがPGで1歩前に出て迎えた後半60分、南アフリカは敵陣の正面にてPGのチャンスを得ますが、そこを狙わずに、タッチへ。

6点差。残り20分。スコアが動かない展開。普通ならば確実に3点を、、というところで、攻める姿勢を貫き通し、最後はゴール前からタップキックで押し込み切る。

南アフリカの持っているラグビー感は、確実に新しい世界に入っているように感じます。ラグビーを革新しようととしている姿を、南アフリカからは大会を通じて感じます。

そして、締めくくりとばかりに、追加招集のポラードが50mを超えるPGを決め4点差に。

今日の最後の勝負の分かれ目は、70分過ぎに、ゴール前でフランスが得たペナルティ。状況は先ほどの南アに似ている。

ここでフランスは3点を詰めた。これがセオリーでしょう。異論はないはずです。しかし、結局彼らは、残った1点を詰めきれなかった。モールは完全に優勢に見えました。あそこは、タッチに出して、ゴール前からモールを押しても・・・と感じてしまいます。

南アフリカも、NZ同様、80分を背にしてフランスに決死の攻撃をされるも、ペナルティをししませんでした。ペナルティをしないで守り切っている。昨日のNZもそうだけど、「ここで絶対ペナルティをしないのだ」という意思を、強烈に全員が持っていたように思う。そこがアイデンティティなのでしょうか。流れる、血、なのでしょうか。




4試合とも、まさに手に汗握る、という展開。そして、NZーアイルランド、南アーフランスは、現代のラグビーの最高峰、と言っていいレベルの試合でした。ノックアウトステージで、これだけインプレーの長い、奔放なアタックが観れるとは思いませんでした。準決勝以降も、ワンダフルな展開を期待したいです!


inokichi`s work(ラグビーとライオンズと小説)

自分の中には、自分の言葉では表すことのできない自分がいる。でも僕は、その自分を抉り出し、その自分を白日の元に晒さなければならない。あるいはそれは僕自身を破滅に追い込むのかもしれない。しかし、あるいはそれは、世界を救うのかもしれない。 サイトのフォローをいただけると、とても嬉しいです。コメントをいただけると、真剣にお返事します。

0コメント

  • 1000 / 1000