妄想ライオンズ:男涙はプレーで返す


ソフトバンクに、終盤、なし崩し的に打たれ、大敗を喫した日、彼は最後までベンチにいた。

一人でベンチの左端に座り、グラウンドのどこかを見つめ続けていた。


負けたことが問題ではない。

負けに向かう、7、8、9回の、ずるずると沼に落ちていくところが悔しかった。

キャッチャーである自分にできたこと、わかっていたこと、わかっていないことが去来する。


その彼を最後に認め、肩を叩いのはヘッドコーチだった。

彼の言葉に、背番号22は涙する。悔し涙じゃない。悔しいんじゃない。

ただ、情けないんだ。それだけだ。


プロの世界は、ある意味残酷だし、ある意味、すぐにチャンスがやってくる。

続けてスタメンに名を連ねた彼は、

昨日の涙を、プレーで返上して見せる。


1回には、2死1塁で4番近藤というところで、スタートを切った三森をきっちりと刺す。

2回には、1点先取後の1死2、3塁で、左中間を破るツーベースを放つ。

制球に苦しみながら力投する今井をしっかりとリードし、

8回には、自らの守備でもスーパープレーを見せる。


ヒーローインタビューで、昨日の涙、昨日のベンチのことを聞かれる。

素直に話しすわけにはいかない、本当のことを。

でも、何を思い、何を感じ、何をしようと思ったのか。

その結果は、今日の試合に、十二分に現れていた。


プロだ。悔しさを涙にしている余裕はない。

けれど、この2日に見えた、彼の心の熱さ、責任感に、僕たちは感動する。

古賀悠斗、2年目。ライオンズの柱へと成長することを、期待してやまないです!


inokichi`s work(ラグビーとライオンズと小説)

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