その後、3年生や一部のメンバーは定期戦の閉会式に出る。
1年生はそれには出ずに帰路につく。深川、一太と僕で電車を乗り継ぎ、地元に戻るまでの約1時間半、僕はあんまりみんなの話が入ってこなかった。
みんなの見立てでは、行き過ぎじゃないけど、要はノックオンしてしまったのがダメだよな、みたいな話だった。あれだけゲインしてゴール見えてて放せって言われてもな、みたいな話もあった。別に僕をかばっているわけでもなく、そんな風に見えた、と言うことだったと思う。
僕はぼんやりとそれらの話を聞きながら、その時のことを考えてみる。何回も考えてみる。
要は、走るコースが見えた、その瞬間に周りが何も見えなくなっていた、と言うことだと思う。 僕はトイメンを交わした後、大元さんの姿も、タックルにきた相手の6番の姿も、全く目に入ってなくて、ただただゴールラインに向かって少し左前に走っていくことしか見えていなかった。走ることに目一杯で、周りを見る目がなかった。それは技術的にはそう言うことなんだと思う。まだまだ抜け出した後のランニングのスキルが拙いということだと思う。でも、僕が引っかかっているのはそこではない。
僕は、大元さんの言う「ボールをつなぐ」ことをファーストに考えられていなかった。
いつも言われていることだから、頭ではわかっていたように思う。でも、いざプレーになった時に、全くそのことが頭になかった。
大元さんの言う通り、俺が俺が、だった。
そんな僕に大元さんは「ラグビーなんかやめちまえ」と言っているように聞こえた。
そのことが、あまりにも図星で核心をついていて、僕の心に刺さって抜けない。刺さっているから痛いけどまだ何も出ない。
でも、この刺さっているものを抜いてしまったら、感情が溢れ出てしまうような気がして、その場で泣き出してしまうような気がして、なんとか心に刺さったままにしながらみんなの話を聞いていた。
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